HEMS(ヘムス)というエネルギーにかかわる言葉をご存じでしょうか。スマートハウスなどの言葉と比べると馴染みがないかもしれませんが、HEMSはよりエコで快適な生活を可能にしてくれます。この記事ではHEMSについて基本的な情報から紹介していきます。
HEMSとは
HEMSとは「Home Energy Management System(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」の略で、家庭で使うエネルギーの管理システムのことです。HEMSは、家電や電気設備とつないでエネルギーの使用状況をパソコンやスマートフォンで「可視化」し、エアコンや照明といった家電を「自動制御」をすることができます。
多くのエネルギーを消費するエアコンや給湯器をはじめ、家庭内のエネルギー消費量を可視化し制御することで、省エネやピークカット(※)の効果が期待されています。政府は、HEMSを「これからの住宅の標準装備」と定め、2030年までに全ての住宅にHEMSを設置することを目標としています。
※ピークカット:使用電力の多いピーク時の使用電力を様々な方法を用いて「カット」し、電力の使用量そのものを低減させ、電力の需要を平準化するための手法
HEMSはなぜ必要なのか
HEMSが必要とされる主な理由は、環境問題対策として家庭でのエネルギー消費を抑える必要があるためです。以前より温室効果ガスの排出量の増加が問題視されており、東日本大震災後の2013年度には過去最高の排出量を記録しました。2016年に発効したパリ協定において温室効果ガスの削減に世界的に取り組んでいくことが合意され、日本も積極的に温室効果ガスの削減に取り組むことが求められています。
温室効果ガス排出の主な原因は、石炭、石油などの化石燃料を燃焼させる際に発生する二酸化炭素です。日本は発電量の多くを火力発電によってまかなっているため、家庭内で電気を多く使用することは、温室効果ガスの排出の増加につながります。
家庭内でどの機器がどのくらいエネルギーを消費しているか把握できていなければ、明確な目標を持って省エネに取り組むことができません。HEMSによって機器ごとのエネルギー消費量を可視化することで、具体的な数値を元に省エネに取り組むことができるようになります。
また、HEMSによって積極的に自動制御を行うことで、無駄なエネルギーの消費を自動的に抑えることも可能になります。HEMSのこのような働きによってエネルギーの消費を抑え、温室効果ガスを削減することが期待されています。
HEMS導入のメリット
エネルギー状況の可視化によって節電への意識が高まる
1つ目のメリットは、HEMSを導入することで、家庭内で使用しているエネルギーを数値で確認できるようになることです。エネルギー消費の無駄に気付くことで自然と省エネ思考になるだけでなく、どこを節約するべきかの判断がつきやすくなります。
HEMS対応の家電や電気設備とつなぎ生活を快適にする
エアコンや冷蔵庫、テレビなどの家電製品から、照明器具や給湯器などの住宅設備まで、HEMSに対応した機器とネットワークを接続すると、スマホやタブレットなどから遠隔で操作することができます。帰宅する少し前にスマートフォンでエアコンをつける、消し忘れた電気を外出先で消すなど、より便利な生活が実現することが2つ目のメリットです。
さらに自動制御を活用することで、電気使用量の大幅な増加を検知してエアコンの温度を制御するといったことも可能になります。快適な生活になると同時に、意識しないところで省エネ効果が生まれることも期待できます。
HEMSが普及しない原因
政府は2030年までに全ての住まいにHEMSを設置することを目標に掲げていますが、2020年となった現時点では十分に普及しているとはいえない状況です。「スマートハウス」などの他のエネルギーに関連の言葉と比べて、HEMSを「聞いたことがない」という人が多いかもしれません。なぜHEMSはあまり普及していないのでしょうか。
他のエネルギーにかかわるキーワードと比べて認知度が低い
一番の原因は認知度が低く、消費者の関心が低いことだといわれています。せっかくHEMSを自宅に導入しても、モニターをチェックすることが習慣にならないなどの理由で関心が高まらないケースもあるようです。しかし、近年では居住者がチェックしなくても自動で家電製品を制御してくれるシステムの開発が進んでおり、この技術が進歩していけばHEMSによる省エネ効果がより高まることが期待できます。
導入にかかる工事費などのコストがネックになる
HEMSの導入にかかる工事費などのコストや、HEMS対応の家電製品に買い替える場合はそのコストがネックになっている面もあります。HEMSと家電製品のネットワーク接続を活用するために、家電製品の買い替えが必要になります。ただし、最近はHEMS対応の家電製品も増えてきているので、以前ほどコストはかからない傾向にあります。
HEMS導入に必要なもの
HEMSを導入するためには、まずHEMSに対応した分電盤(ブレーカー)が必要です。分電盤は電気を使用する家庭であれば必ず設置されているものであり、分電盤をHEMS対応版に切り替える必要があります。
さらに「電力測定装置」と「情報収集装置」が必要になります。電力測定装置は各家電製品の電力消費量を測定し、情報収集装置は家電製品と無線での接続を可能にしてくれます。モニターも同時に設置するケースもありますが、クラウド型HEMSであればパソコンやスマートフォンから必要な情報を見ることができるため不要となります。
まとめ
HEMS導入によって家庭内のエネルギー消費量が可視化され、省エネへの意識が高まると同時に、具体的な目標も立てやすくなります。加えて、自動制御やネットワーク接続により、従来と比べて便利な生活を手に入れつつ省エネを実現させることが可能になります。
HEMSによる省エネに、太陽光発電などの自家発電を組み合わせることでさらに家庭内のエネルギーを効率よく運用できるようになります。省エネ・節電にはさまざまな方法があるため、色々な組み合わせを検討されてみてはいかがでしょうか。